「静岡県の伝統工芸」と「上野焼」のトークショー
青山スクエアでは今日から、特別展「静岡県の伝統工芸品展」と匠コーナー「上野焼 守窯 作陶展」が始まりました。
14時からは、恒例のトークショーが行われましたので、
その様子をお伝えいたします。
まず初めに、本日実演をしていただいている駿河塗下駄の佐野さんにお話を伺いました。
静岡県には国指定の伝統的工芸品と県指定の伝統工芸品を合わせると、
全部で22品目ありますが、
そのうちの12品目が静岡市にあります。
塗下駄も駿河に産地のある工芸品で、
現在は浴衣に合わせるだけではなく、ジーンズにも合うような塗下駄を作っているそうです。
そのため昔に比べると、
派手な塗下駄を制作することが増えたとおっしゃっていました。
駿河塗下駄は分業制で、
佐野さんは塗師をしています。
昔は下絵塗と上絵塗にわかれていましたが、
今はどちらも一人でするようになりました。
現在の作り手は4人しかおらず、
さらに木地師が減ってきているため、
塗師としての技術を学んでも、将来の見通しが立たない状態のようです。
駿河塗下駄に施す図柄は、
特に決まりがなく、
お客様の要望を受けて描くことも多くあります。
男性からは龍や鳳凰の図柄を頼まれることが多く、
縁起物の絵をよく描くとおっしゃっていました。
また、駿河塗下駄の手入れについて聞いたところ、
「塗下駄だから」という特別なことをする必要はなく、
雨に濡れたら、乾いた布で拭いたり、
天日干しをしたりするだけで、
問題はないそうです。
佐野さんは塗下駄の技術の中でも、
卵殻張を得意としているのですが、
他の人がほとんどしていない技法のため、
お客様からは珍しいと言われ人気だとおっしゃっていました。
次に駿河竹千筋細工の神谷さんにお話を伺いました。
神谷さんは、ご自身が高校2年生の頃に、
伝産協会が毎年行っている全国大会が静岡で開催しており、
足を運んだ時に駿河竹千筋細工と出会い、
この世界に入りました。
竹は身近な存在だったのですが、
それがこんなにも繊細なものとして形になるんだと衝撃を受けたそうです。
当時(今でもですが)、駿河竹千筋細工の作り手は、ほとんどが男性でした。
そんな中に、女性でしかも十代で弟子入りを希望した神谷さんに、
周りは驚きを隠せなかったといいます。
すぐにやめてしまうかもしれない、という周りの目を裏切って、
現在も作り手として活躍しています。
現在、作り手になって17年ですが、
自分で思うような形が作れるようになったのは、5,6年経ってから、
さらに駿河竹千筋細工の中でも難しいとされる四角の形を作れるようになったのは10年経ってからだそうです。
今はようやく、自由な形を作れるようになりましたが、
いつも新しいものを作っていこうと考えているとおっしゃっていました。
最後にお話しいただいたのは、上野焼の熊谷さんです。
上野焼は福岡県の伝統的工芸品です。
上野焼は、釉薬をかけて作るもの(飴釉と白のグラデーションのものなど)が多いのですが、
熊谷さんは上野焼に絵付けを施したものを作っています。
お父様の友人が上野焼をしていたため、
そこで修業をし、
7年経ってから自分で窯を開きました。
もともと人と同じことをするのが好きではない熊谷さんは、
絵付けをした上野焼がほとんどないのを見て、
あえてその道を選んだそうです。
ですが上野焼400年祭が行われた時、
昔の上野焼を掘りだしてみると、
上野焼で絵付けをしていた人がいることがわかり、
自分が初めてじゃなかったのかと知りました。
また今、熊谷さんのお嬢さんも同じように上野焼を作るようになっています。
今回の匠コーナーにも、
お嬢さんの作品が並んでおり、
熊谷さんが考えないような角度から作品を作っていくので、
いい刺激を受けているとおっしゃっていました。
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今回お話しいただいた佐野さん、神谷さんは特別展「静岡県の伝統工芸品展」に6月13日まで出展されており、実演も行われています。
熊谷さんは匠コーナー「上野焼 守窯 作陶展」に、お嬢さんと一緒に6月6日まで出展されていますので、
ぜひ青山スクエアにお越しください。