伊賀くみひも

伊賀くみひもの始まりは古く、奈良時代以前にまで遡ると言われています。
平安時代には唐組(からくみ)の平緒、経巻、華篭(けこ)、幡飾(はたかざり)等の仏具、神具等に凝った紐が用いられるようになりました。武士階級の時代になると甲冑や刀剣の紐が多く生産されるようになり、武具類を中心とするくみひも文化が生まれました。廃刀令が出て、武家社会が崩壊してからは、江戸時代の伝統くみひもの技術は和装に欠くことのできない帯締め、羽織紐として親しまれています。

  • 告示

    技術・技法

    1 糸染めは、「丸染め」、「絞り染め」又は「ぼかし染め」によること。

    2 組みあげには、高台(「重打台」を含む。以下同じ。)、丸台、角台、綾竹台又は内記台を用いること。
    (1)高台又は綾竹台を用いる場合において、「打ち込み」には、「箆」を用いること。
    (2)高台を用いて組模様を組み出す場合には、「綾取り」によること。

     

    原材料

    1 使用する糸は、生糸若しくはこれと同等の材質を有する絹糸又は金糸若しくは銀糸とすること。

    2 使用する箔は、金箔若しくは銀箔又はこれらと同等の効用を有するものとすること。

  • 作業風景

    和装の名脇役として欠かせない帯〆は、日本伝統の組紐技術の粋を集めたものであります。手作りで生産される手組紐は、全国生産量のおよそ90%が大阪と名古屋の中間に位置する伊賀で組まれ、昭和51年12月15日、国の伝統的工芸品に指定されました。伊賀くみひもの起源は、奈良時代以前に遡るといわれ、江戸時代には既に産地を形成していました。組紐とは生糸、絹糸を主に金銀糸等を組糸に使い、角台、丸台、高台、綾竹台などの伝統的な組台で、繊細な美しさをもつ紐に組み上げたものです。

    伊賀くみひもの工程は細かく分けられています。ここではその工程の大きな流れをご紹介します。

    工程1: 糸割(いとわ)り

    糸割りは、必要となる絹糸を必要な分だけ仕訳ける作業です。糸を秤にかけ、作ろうとする紐の本数分を目方で分けていきます。

    工程2: 染色

    染色の工程では、微妙な色合いを指定通りの色にムラなく染め上げていきます。染料の調合を加減し、糸を浸す、この作業を繰り返しながら色の濃淡や深みを表現していきます。デザインによってぼかしの表現も行います。熟練を要する緻密な作業です。

    工程3: 糸繰(いとく)り

    糸割り、染色したかせ糸を座繰(ざく)り、糸繰り機で小枠(こわく)に巻き取ります。

    工程4: 経尺(へいじゃく)

    経尺工程では糸繰りされた糸をさらに経尺枠に巻きとっていきます。経尺枠の外周は4尺あり、帯〆一本にようする長さ8尺の半分、枠を回しながら組み上げに必要な長さと本数を整えます。

    工程5: 撚(より)かけ

    経尺で糸の長さと重さを合わせた糸は八丁(はっちょう)という、よりかけ車を使ってよりをかけます。

    工程6: 組みあげ

    各組台と製組機によって美しい組紐を組み上げていきます。組紐は、大きく分類すると、丸組紐、角組紐、平組紐の三種に分けられます。組台には、丸台、角台、綾竹台、高台の四種類が今日では一般的で、組台はそれぞれ特徴を持っているので、組紐の種類に応じて使い分けます。組紐は、大きく分類すると、丸組紐、角組紐、平組紐の三種に分けられます。組台には、丸台、角台、綾竹台、高台の四種類が今日では一般的で、組台はそれぞれ特徴を持っているので、組紐の種類に応じて使い分けます。

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    工程7: 仕上げ

    組み上げられた紐は、両先の房付けにはじまる仕上げの工程におくられます。一本一本手作業で糸を解し(ほぐし)、房目をしっかりと糸で結び、房は蒸気で湯のしされ、整えられていきます。最後に、転がし台で組目を整え、美しい平組の帯〆が完成となります。

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  • クローズアップ

    四方を山に囲まれた忍者の里で発展した、伊賀くみひも

    伊賀くみひもの起源は古く、奈良朝以前に遡るといわれているが、伊賀の地場産業としての本格的な発展は明治中期に入ってからのことである。伊賀の地で生産される手組の帯締めは、全国の生産量のおよそ90%を占め、国の伝統的工芸品に指定されている。

     

    明治中期、和装の普及とあいまって広まる

    明治35年頃、広沢徳三郎(ひろさわとくさぶろう)が江戸のくみひも技術を習得し、故郷である上野市で糸組工場を設立。和装の本場京都に近いという地の利をいかして産業として発展、定着し伊賀の里に広まっていった。今回は祖父の代から数えて三代目のくみひも士、増井萌(ますいもゆる)さんにお話を伺った。

    くみひもセンターの高台に上がって模範演技中の増井さん

    わずかな幅のなかに無限の美が広がる

    東京の大学を出てしばらく名古屋方面でサラリーマンをしていた増井さんは、30歳で家業を継ぐために上野市にUターン。「家内には詐欺だと言われましたが、姉と妹が他家に嫁いでしまったので長男の私が家に帰らざるを得なくなったのです。」くみひも職人としてはかなり遅いスタートだったが、父の傍に黙って座りながら肌で技術を習得したという。「なんとか新しい斬新なデザインを考え出そうと挑戦していると、『帯締めだけが一人歩きしてはダメだ』と父によくしかられました。」

    伝統の美を伝える伊賀くみひものポスター

    職人さんを確保するためにまず自分が技術を磨いた

    「父は自転車で回れる範囲の、家の近くに住む組子(くみこ)さんにしか仕事を頼めなかったのですが、私は車に乗れたので、遠く奈良や滋賀にまで組子さんを探して走り回りました。」時代が変わり、主婦がパートで外で働くようになると安い工賃でもくもくとくみひもを組んでくれる人を確保するのが難しくなった。まったく初めての人たちに仕事を教えるために、増井さん自身も懸命に技術を磨いたという。当時は伊賀地方に3000人以上いた職人たちも、原料と工賃の安い外国製品におされて、いまは三分の一に激減。くみひもの伝統を守るために増井さんたちの苦労は続いている。

    伊賀くみひもの歴史

    元来くみひもは奈良時代、経典などの仏具や神具の紐などに使用されていた。平安期になると貴族たちの装束や室内を飾る紐として愛用され、鎌倉時代には武士の甲冑、刀の紐などの実用品として発展。伊賀では江戸時代に暗躍した忍者たちが紐の結び方で仲間に合図を送っていたとも伝えられている。しかし、実際に伊賀でくみひも産業が盛んになるのは近年に入ってからである。明治中期、手内職の相場が三銭だった頃、くみひも屋は十五銭だしたので近隣の主婦たちが続々と集まり技術を競い合って発展した。

    戦国時代には鉄製の鎧(よろい)をつなぐ紐としてオドシの部分に使われた

    何度かの時代の波をかぶり生き延びてきた

    縄文時代以来、人々の生活様式の変化のたびに、くみひもはさまざまに形を変えて生き延びてきた。明治維新の時、政府が廃刀令を施行し、刀と共に組紐の歴史も幕を閉じるかと思われた。しかし江戸の亀戸天神に太鼓橋が完成。粋な深川芸者が太鼓橋をイメージして帯を背中に高く結んで、くみひも製の帯締めで帯を留めて渡り初めをした。これが今のお太鼓結びの始まりで、この時の帯締めが評判となり、くみひも製の帯締めが大流行。それ以来、くみひもは和装小物の必需品となり今日に至っている。

    小枠(こわく)に巻き取られた、あでやかな絹糸

    若い世代に伝統を受け継いで行く

    「この伊賀くみひもセンターでは、初めてのひとでも20分で簡単にくみひもが体験できますよ。一度チャレンジされませんか?」増井さんはセンター内にある高台に上がって、50本~70本の美しい絹糸を巧みに操りながら気軽に誘ってくれた。伊賀くみひも組合では青年部の人たちが近隣の中学などで伝統産業としてのくみひもを学生たちに指導しているという。また、観光客にも丸台を使って、手軽にくみひも体験できるコーナーがある。実際に私も若い指導員について初めてくみひものキーホルダーを作ってみたが、コツさえつかめば案外簡単にできあがった。

    くみひもセンター3階での一日くみひも体験

    職人プロフィール

    増井萌 (ますいもゆる)

    1946生まれ。
    東京の大学を卒業後、しばらく名古屋方面でコンピュータ関係のサラリーマンをしていたが、30歳の時に帰郷。3代目として家業を継ぐ。伝統工芸士の資格を持つ。

    こぼれ話

     

     

概要

工芸品名 伊賀くみひも
よみがな いがくみひも
工芸品の分類 その他繊維製品
主な製品 帯締め、羽織紐、ネクタイ
主要製造地域 伊賀市、名張市
指定年月日 昭和51年12月15日

連絡先

■産地組合

三重県組紐協同組合
〒518-0873
三重県伊賀市上野丸之内116-2
伊賀伝統伝承館
TEL:0595-23-8038
FAX:0595-24-1015

http://www.kumihimo.or.jp/

実店舗青山スクエアでご覧になれます。

特徴

美しく染め上げられた絹糸、その一筋一筋が交わり合い、くみひも独特の風合いと味わいを作り出します。その技法は古来より伝えられてきたものです。

作り方

糸を量りにかけ、例えば帯締めの場合は、作ろうとする紐の本数分の糸を重さで分けます。くみひものデザインにより色見本に忠実に染め糸繰りします。その糸を経尺枠に巻取ります。経尺枠の外周は5尺(約150センチ)、帯締め一本分は8尺5寸(約250センチ)ですからこれで丈の本数を整えます。八丁という「撚(よ)りかけ車」で撚(よ)りをかけ、角台(組み上げ用)、丸台(組み下げ用)、綾竹台(平紐用)、高台(高級な紐用)等の台を用いて組み上げます。

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