名古屋仏壇

愛知県

あつい仏教信仰に支えられ、早くから仏壇作りの技が育っていたこの地方では、江戸時代初期にはすでに専門店が存在していました。
これら大問屋は株仲間を形成し、職人集団として技を磨き、伝統的な技術・技法を育んで来ました。
明治の初めには組合が作られ、全国各地で開かれた産業博覧会等に名古屋仏壇は出品されました。そのことによって商圏を拡大し、大きな産地として成長したのです。現在では二百数十を数える事業所が存在し、多くの伝統工芸士によって仏壇が作られています。

  • 告示

    技術・技法


    「木地」の構造は、「ほぞ組み」による組立式であること。


    なげしは、「直線なげし」又は「かぶとなげし」とすること。


    障子は、「通し障子」又は「花頭障子」とすること。


    台は、「みつまくり」を備えたものとすること。


    宮殿造りは、「肘木桝組み」によること。


    塗装は、精製漆の手塗りとし、「木目出し塗り」にあっては、「ろいろ仕上げ」をすること。


    蒔絵及び金箔押しをすること。

    原材料


    木地は、ヒノキ、ケヤキ、シタン、コクタン、ビャクダン、イチイ若しくはセン又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    金具は、銅若しくは銅合金又はこれらと同等の材質を有する金属製とすること。


    漆は、天然漆とすること。

  • 作業風景

    仏壇の製作工程は大きく8つに分けられます。木地造り、宮殿(くうでん)造り、彫刻、塗装、錺金具(かざりかなぐ)造り、蒔絵(まきえ)、箔押(はくおし)、組立の8つで、その各工程を、「八職」と呼ばれるそれぞれの専門職が分業しています。仏壇のひとつひとつが、高度な技を持つ職人たちの合作なのです。

    工程1: 木地造り

    原材料となる檜などの木材を乾燥させ、木取りをして、仏壇内外の部位をつくって仮組みします。木地は全部で27もの部品から成り立ちますが、その全てを「ほぞ組み」します。ほぞ組みとは、釘を使わず、木と木を組み合わせて留める方法で、分解修理が可能です。名古屋仏壇の特徴になっている高い台や「みつまくり(台の前面の三枚の持ち上げ式の扉)」、「直線長押(なげし)」などもこの木地造りの段階で作られます。

    工程2: 宮殿造り

    仏壇内にある宮殿の屋根や柱、仏像を安置する須弥壇などをつくって仮組みします。宮殿は宗派によって「宮殿御坊様(くうでんごぼうよう)造り」「御坊様造り」「荘厳(しょうごん)造り」など5つに分かれます。名古屋では、浄土真宗大谷派(東別院)の宮殿御坊様造りが半数以上を占めています。

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    工程3: 彫刻

    構図に従って花、鳥、龍、唐草、天人などを彫ります。彫刻は天日で自然乾燥させた檜や姫小松、ケヤキなどの木材を使います。長押の上や宮殿のまわりなどにつけられる名古屋仏壇の彫刻の精巧さは全国有数といわれています。

    工程4: 塗り

    砥粉下地を塗って漆を塗ります。塗装カ所は34ありますが、部位によって「木目出し塗り」「呂色(ろいろ)塗り」「立塗り」「箔蒔塗」という四つの方法を使い分けます。呂色塗りは 砥石と駿河炭を使って漆塗りした面を研いで平らにする技法で、呂色師と呼ばれる専門の職人が担当します。

    工程5: 錺金具(かざりかなぐ)造り

    図柄に従い、ノミと金槌を使って彫り模様を浮かせたり、抜いたりして仏壇の各所を飾る金具をつくります。錺金具は使われる場所によって「内金具」と「表金具」に分けられ、それぞれ専門の職人が担当しています。

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    工程6: 蒔絵(まきえ)

    塗りをほどこした上に、図柄に従って金粉・銀粉を使って絵を描きます。蒔絵には「金蒔絵」「錆蒔絵(さびまきえ)」「立蒔絵(たてまきえ・立体的な蒔絵)」「平蒔絵」があります。

    工程7: 箔押(はくおし)

    塗りをほどこした上に金箔をはりつけます。まず、押漆(おしうるし)を平均的に塗った後、綿で漆を拭き取り、箔箸を使って純度95.24パーセント以上の金箔を押していきます。そのあと、棒の先に綿をくくりつけたものでこすって余分な金箔を払い落とします。名古屋仏壇では、拭上げの加減により艶消仕上げする 「艶消し置(つやけしおき)」が特徴になっています。

    工程8: 組立

    それぞれの専門職によって作られた部品を組み立てます。まず最初に錺金具を取り付け、次に宮殿や胴、内回りなどを組み立てます。さらに各部品を取り付けて布で拭き上げたあと、入念なチェックが済んで完成となります。

     

  • クローズアップ

    「極楽浄土」の金を貼る

    名古屋仏壇の特徴は、台が高い、「みつまくり」と呼ばれる持ち上げ式の扉を台の前面に備えている、金箔を多用し豪華な作りになっている、などの点である。世帯数に占める仏壇普及率が全国平均の40パーセントを10ポイント近くも上回るといわれる名古屋で長年箔押師(はくおしし・漆塗りした上に金箔を貼り付ける専門職)の仕事を続けてきた丹羽進さんにお話を伺った。

     

    仏壇通りに並ぶ金仏壇

    名古屋の大須観音の南に門前町通という通りがある。大須から東別院方面に向かう商店街で、大小の仏壇仏具店数十軒が並ぶ「仏壇通り」だ。ショーウィンドーの中の名古屋仏壇は、大きく豪華で目を引くものばかりだが、特に目立つのは金箔が多用されていることで、これはこの地方で7割を占める浄土真宗大谷派(東別院)の仏壇の特徴だという。 今、主に出るのは高さ170センチ、幅66センチ、奥行き53センチ程度の20号と呼ばれるもので、そう大きくはないというが、都市化が進んだ名古屋にあってなお、このサイズの仏壇が売れるのだからすごい。

    金箔の厚さは千分の一ミリ

    丹羽進さんは祖父の代から続く箔押師の家に生まれ、19歳の時から50年以上この仕事を続けている。「簡単そうに見えるでしょう。でも、案外難しいんですよ。」と、丹羽さん。薄い紙にはさまれた金箔を箔箸という専用の箸ですっと取り、漆を塗った板に次々と貼り付けていく。これらは仏壇の扉の内側やご本尊の奥の壁などになる部分だ。すっ、すっ、と全面貼り付けると、竹棒に綿をくくりつけたもので金箔と金箔の継ぎ目の余分なところを払い落とす。地域の小学校の特別授業や伝統工芸品フェアなどで実演すると大人気だそうだが、希望者にやらせてみるとうまくいかない。厚さ千分の一ミリという金箔を箸でつまむことすらなかなかできない。手につけてくしゃくしゃにしてしまう。安いものではないだけに丹羽さんもはじめは苦労したという。

    金箔は金の含有量によって4種類ある。厚さは僅か千分の一ミリだ

    気候・天候で変わる条件

    けれども、本当に大変なのは、箔押が気候や天候によって全く条件が変わってくる点だ。「風があるとだめなんですよ。」とおっしゃるので、飛んでしまうのかと思ったら違った。金箔を貼るために塗る押漆という漆が、風があるとなかなか乾燥しないのだそうだ。乾燥に時間がかかりすぎると金が変色して青っぽくなってしまう。風の強い春先が特に危険なのだという。また、梅雨時には湿気が多くて漆が乾きすぎる。乾いてしまうと金箔がつかないので、室の中で板で囲ったりする。真冬の雪が降るような時には乾燥するので、一升もの酒を吹きつけた板を立て、アルコールの蒸発で湿気を調節することもあったという。「今はエアコンがあるからずいぶん楽になりましたよ。親父の頃は扇風機すらかけられなかった。」

    ご本尊の奥の壁に箔押し、蒔絵の青貝を浮き出させる

    仏壇は位牌を入れる箱ではない

    それでも湿気の調節は微妙で難しい。「死ぬまで修業です。」と丹羽さんはおっしゃる。けれども、昨今の不景気で 仏壇の売り上げは大幅に減った。さらに最近は、全国的な流れとして金箔や蒔絵を使わない仏壇が増えてきている。「現代仏壇」とか「家具調」といわれるもので、東京を中心に、紫檀や黒檀を使ったシンプルで小型のものが好まれるようになってきた。名古屋では従来の金仏壇が主流というが、大きく豪華なものは少しずつ減ってきた。海外からの安い輸入品も入ってくるようになった。「人数が減っちゃって、曲がり角が来たかなあ、と思う時もあります。」それでも、 名古屋仏壇組合には八職合わせて30人の若手職人がいる。 今36歳の丹羽さんの息子さんもその一人だ。「日本人はね、ある程度歳がいくと仏壇を見直すんです。他力本願かもしれないけれど、仏壇は廃れないと思います。」仏壇は位牌を入れておく箱ではなく、その家のご先祖を安置する「ミニ寺院」で、 仏壇の金色は極楽浄土を表すのだという話を伺った。

    箔押した板の余分な金箔を竹棒に綿をくくりつけたものを使って落とす

    職人プロフィール

    丹羽進 (にわ・すすむ)

    昭和5(1930)年生まれ。
    祖父の代から続く箔押師の家に生まれ、19歳でこの仕事をはじめる。
    八職からなる名古屋仏壇伝統工芸士会会長。
    息子さんも箔押師。

    丹羽進さん。住まい兼作業場は門前町通からすぐの所

    こぼれ話

    仏壇供養祭

    仏壇は古くなったら「洗い」に出して、最低100年は使えるといわれています。けれどもさまざまな理由で仏壇を処分しなければならないとき、その処分方法には困ります。仏壇供養祭は、長年その役目を果たしてきた仏壇に感謝し、供養して処分するもので、昭和59(1984)年から毎年3/27に大須観音を会場に行われてきました。3/27は「日本書紀」によると、白鳳14(685)年のこの日、天武天皇が諸国に詔を出し、家ごとに仏舎・仏壇を安置して礼拝供養することを命じた日とされています。大須・万松寺から商店街を担がれて大須観音まで到着した仏壇は、住職による読教のあと、解体されて焼却されます。毎年30~40本の仏壇がここで供養・処分されています。

    • 関係者が見守る中、次々と仏壇が燃やされていく

    • 大須観音に到着すると、本堂で供養が行われる

    • 大須商店街の万松寺通りを仏壇を担いで歩く。赤い旗がかけてあるのが供養する仏壇

     

概要

工芸品名名古屋仏壇
よみがななごやぶつだん
工芸品の分類 仏壇・仏具
主な製品仏壇
主要製造地域名古屋市、岡崎市、一宮市、瀬戸市、半田市他
指定年月日昭和51年12月15日

連絡先

■産地組合

名古屋仏壇商工協同組合
〒460-0016
愛知県名古屋市中区橘1-6-5
大野屋ビル
TEL:052-321-5608
FAX:052-322-6779

特徴

名古屋仏壇には各宗派にあったそれぞれの様式があります。優美な浄土を具現したものや禅風を感じさせる落ちついた作品等、その技術の確かさを誇っています。また、高台という台の部分の中等に、用具一式が収納できる合理性は名古屋仏壇の特徴です。

作り方

木地師(きじし)、荘厳師(しょうごんし)、彫刻師、内外飾金具師(ないがいかざりかなぐし)、塗師(ぬし)、蒔絵師、箔押師(はくおしし)等八職(はつしょく)と称する専門職が各部をそれぞれ担当して作り、ほぞ組によって組立てられます。細部にわたって行き届いた技法が駆使されています。分解、部分補修、「お洗濯」と称する再生が可能です。

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