伝統工芸 青山スクエア

広島仏壇

広島県

広島は、古くから浄土真宗が盛んな土地柄でした。江戸時代初期に、紀州から移り住んだ飾り金具細工師や桧物細工師(ひものさいくし)、塗師(ぬし)等の技術をもととし、その後、敦高(とんこう)という僧が京都、大阪に出向いて、仏壇・仏具の高度な製造技術を学んで帰ったことで、広島仏壇の技術・技法が確立されました。
明治時代に入り、瀬戸内海の水運の便を利用して全国に出荷されましたが、第二次世界大戦で壊滅的打撃を受けました。戦後、過去の伝統を受け継ぎ復活しました。

  • 告示

    技術・技法


    「木地」の構造は、「ほぞ組み」による組立式であること。


    宮殿造りは、「桝組み」によること。


    塗装は、精製漆の手塗りとすること。


    蒔絵及び金箔押しをすること。

    原材料


    木地は、スギ、マツ、ヒノキ又はこれらと同等の材質を有する用材とすること。


    金具は、銅若しくは銅合金又はこれらと同等の材質を有する金属製とすること。


    漆は、天然漆とすること。

     

  • 作業風景

    工程1: 木地

    まず木地師が、ヒノキまたは杉の木を使い、胴組天井と柱を作ります。これらの木は仕入れの後、1年以上も天日で乾燥させます。広島仏壇は注文があるたびに、木地師がそれに応じた木をみつくろい、作成していきます。ベテランの木地師でも一本の仏壇を作るのに、10日~2週間くらいかかると言われています。

    工程2: 宮殿づくり

    続いては宮殿師の出番。円柱状の柱抜きから瓦にいたるまでの、たくさんの小さい木の細工を組んでニカワでつなぎます。宮殿師は仏壇の各部分の配置によってひとつにまとめることから、加工の源とも言える仕事です。

    工程3: 木彫刻

    次は彫師(ほりし)、彫刻師の出番。図案に沿って木を切り抜いて、ていねいに彫っていきます。制作するに当たっては、多くの道具を必要とします。それをいかに使い分けるかも職人の腕の見せどころとなります。手慣れた彫師でも、仕上げまでには1週間から10日ぐらいはかかります。

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    工程4: 卓型(しょくがた)

    続いては卓型(しょくがた)と呼ばれる、たいへん細かい作業の必要な部分。中削りしたものに図面を書き、手で彫ってくりぬいていきます。ここで壇まわりが完成します。

    工程5: 漆塗り

    これまでの仕上がったものに漆をぬるのが5つ目の工程、塗り師です。下地にとのこを塗り、その上に精製漆を刷毛塗りして乾燥させます。下塗り、中塗り、本塗りと繰り返すことにより、深く味わいのある色つやが生まれてきます。

    工程6: かざり金具

    かざり金具師は、扉の取り付けなどのよく使用される部分の蝶つがいや、たくさんの装飾金具を作っていきます。これらの金具が、小気味よい音とともに彫金によって美しく仕上げられていきます。材料には銅やしんちゅうを主に使いますが、これは金メッキや複雑な加工をしやすいからです。かざり金具には平面的な彫刻の毛彫り、立体的な地彫り、その中間の浮き彫りがあります。

    工程7: 蒔絵

    漆塗りの工程を経た仏壇の下半分の装飾に、さらに漆で下絵を描き、その上に純金の粉をふって仕上げていくのが、蒔絵師の仕事です。その後、乾燥させて仕上げていきますが、ここで広島仏壇の豪華さや独特の立体感といったものができ上がっていく重要な工程です。

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    工程8: 箔押し

    8つ目の工程は、箔押しと呼ばれる部分です。広島仏壇の中側の装飾は、この金箔押しによって作られます。約12センチの正方形の金箔を、1枚ずつ箔押し漆を塗り上げた上に押しつけ、合わせ目をそろえて仕上げていく工程ですが漆を塗り上げた状態によって、うまくいくかどうかが決まってきます。こうして金箔が完全に密着するまで、室(むろ)のなかで8時間乾かします。

    工程9: 組み立て

    そして最後に、これまでの作業の工程をまとめあげるのが組み立てと呼ばれる工程です。8つの工程を経た部門が集められて、それを組み立て、金物を打ち、障子に紗を張り、とぎあげるという作業です。こうして、豪華な広島仏壇がやっと完成するのです。

     

  • クローズアップ

    浄土真宗のはぐくんだ芸術品、広島仏壇

    仏壇は、先祖や亡くなった人をまつるためだけにあるのではなく、目に見えない浄土や阿弥陀如来を形にあらわし、おまつりする場であるとも言える。真宗の仏壇は浄土を表したもので金箔が張られ、これが広島仏壇の中心となっている。

     

    安芸門徒とともに歩んできた広島仏壇

    浄土真宗の盛んな広島では、古くから門徒を対象とした仏壇製造が盛んであった。しかし当初、技術はまだ発展途上の段階であったところに、1619年浅野長晟が紀州から転封された折りに、優秀な漆工職人たちを引き連れてきたことで、仏壇の製造技術が飛躍的に向上した。その後、1716年に敦高という僧が、京都、大阪で仏壇仏具の技術を学んで帰ってきたことで、広島仏壇の高度な技術は確立していった。明治になって、県外にも出荷されるようになると、大きさのかさばる仏壇を運搬する上において、瀬戸内海海運という交通の要所に恵まれたこともあり、その生産は大正末期には全国一となっていた。

    豪華さと優美さが魅力の広島仏壇

    原爆により壊滅的な被害に

    広島という地を語る上で、やはり原爆の話は避けて通れない。仏壇職人が大勢暮らしていたところは爆心地からほど近く、多くの職人が命を落とした。戦後、出兵していた職人たちと残っていた職人が、力を合わせて広島仏壇の復興に尽力し、需要も次第に上向いていった。広島の人たちは仏壇の前で手を合わせるとき、ご先祖をおまつりするだけでなく、その先には被爆した経験があるからこその、真の世界平和というものまで願ってお参りしているのであろう。

    仕事は集中力を要する

    金仏壇ならではの壮麗な美しさ

    広島仏壇の特徴はなんといっても、金箔という最高の材料を使った壮麗さである。この金仏壇が広島仏壇の主流である。形式は大阪型と類似しているのも、特徴と言える。仏壇が出来上がるまでの各工程では、七匠と呼ばれる仏壇職人たちが腕を競い合っている。木地師、狭間師(さまし)、宮殿師(くうでんし)、須弥壇師(しゅみだんし)、かざり金具師、塗師(ぬし)、蒔絵師(まきえし)と呼ばれる人たちだ。蒔絵師の真志田(ますだ)氏はこの道54年という超ベテラン。「仏壇の蒔絵は、日常使いの漆器のような耐久性には乏しいが、豪華さが求められる」と、仕事の難しさでもありおもしろさでもある、その魅力を語る。「もっとも難しいのは漆つくり、ムラ乾きして均等に乾いてないと、次に蒔く金粉までムラになる」その金粉を蒔くタイミングなどは、まさに職人の長年のカンや腕が冴えるところである。

    作業中の真志田さん

    確かな仕事はよい道具と材料に支えられる

    多くの用具が今では機械化されている中、広島仏壇では今でもかなりの工程が昔ながらの匠の手仕事で支えられている。「今、一番気がかりなのは、いい蒔絵筆ができなくなったこと。材料がよくないんだろう。筆はとても重要、いい筆だと仕事もはかどるから」と語るとき、温和な真志田氏の顔が一瞬、くもる。いい手仕事はまた、いい道具に支えられている。蒔絵筆の寿命は、約1カ月だそう。それを超えると毛先がだめになって、微妙な線が描けない。「思うようなものが描けたときはとてもうれしいが、よかったり悪かったりということのない、平均した仕事を常に心がけている」と話す真志田氏の表情は、本当にあたたか。仏壇の向こうで心静かに手を合わせる人たちのことを考えて、いつも描いておられるからだろうか。多くの方にこの広島仏壇の魅力をもっと知ってもらいたいと、製作工程をイベント会場で実演することもあるそうだ。しかし、この蒔絵だけは観客へのかぶれの問題もあって、なかなか難しいのが現状。漆のかわりに新しい化学塗料の開発も行われているようだが、結果が出るまでには何年もかかるもの。やはり自然の材料はやさしいし、それがベストだから昔から変わらず引き継がれているのであろう。

    • 飾りに使う貝を細かく切る

    • 蒔絵師にとって筆はとても重要

    職人プロフィール

    真志田沃

    伝統工芸士、真志田沃さん、昭和22年から始めてこの道54年。細かい作業に神経を集中する。

    こぼれ話

    住宅事情が反映する、仏壇のサイズと色

    仏壇の大きさの名称は各地によってさまざまですが、広島仏壇の場合は板内幅のサイズを号数(1号は約3センチ)で表しています。現在の売れ筋は、18号と呼ばれるもの。全体の出荷数の約3分の2を占めています。以前は24号と言われるサイズが主流でしたから、約20センチも小ぶりになりました。もっと小さいサイズや、最近では和室自体のないお宅も増えていることから、洋間に合うデザインといったものも開発されています。また色も今までは黒と金が中心でしたが、最近では色漆やシルバー、白といった色も使われて、インテリアに合う、モダンなイメージのものも人気を集めています。伝統を守りながらも、時代の流れを柔軟に受け入れる広島仏壇。けれど先祖をうやまう気持ちだけは、これからも変わらないことでしょう。

    • 地袋のない仏間用のもの、21号胴長

     

概要

工芸品名 広島仏壇
よみがな ひろしまぶつだん
工芸品の分類 仏壇・仏具
主な製品 金仏壇
主要製造地域 広島市、三原市、福山市、府中市、三次市他
指定年月日 昭和53年2月6日

連絡先

■産地組合

広島宗教用具商工協同組合
〒730-0033
広島県広島市中区堀川町2-16
(株)三村松 内
TEL:082-243-5321
FAX:082-246-0440

特徴

広島仏壇は下地材料として、広島名産である牡蠣(かき)の殻を細かく砕いたものを使用した胡粉下地(ごふんしたじ)を使います。上塗りの「立て塗」の技術には定評があり、金箔押しの技術にも優れています。形式は大阪型と似ています。

作り方

製作工程は、分業です。木地部門、宮殿(くうでん)部門、彫刻部門、金具部門、蒔絵部門、漆塗部門の各職に分かれています。木地部門は、原材料に、スギ、マツ、ヒノキまたは、これらと同等の材料を用い、ほぞ組みによる組立式で作ります。宮殿部門は、ます組みによって作ります。漆塗部門は、下地から上塗り、そして金箔押しまでを担当します。各部門で作られたものを仕立てて、一本の仏壇にします。

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